井上善右衛門師のご紹介

私が井上先生に初めてお会いしたのは、私が大学3回生の昭和41年9月です。母の主宰する垂水見真会に初めてご出講された時です。その時以来、平成2年12月の最後のご講演まで、今年5月に500回の記念講演を迎えた中で、62回ものご出講を頂きましたが、それ程に私の母大谷政子が尊敬・敬慕していた証であります(写真は、母が亡くなる約1年半前、昭和59年12月15日、「恩師の想い出」と言う講題でご講演頂いた際の、講師控え室での井上先生と母政子のツーショットです)。

私は直接的に親しくお付き合いをさせて頂いた訳ではございませんが、最も影響を与えて下さった仏教の師であります。『学徳優れた方』と言う表現がございますが、これは井上先生の為にあると言っても良いものだと思います。

先生は謙虚な方であり、目立つ事を好まれないお人柄ですから、世間的には著名ではございませんが、私の視野が狭い事を承知の上に致しましても、親鸞聖人のお教えを最も現代的にそして哲学的・倫理的に受け継がれた唯一の方であると思っております。

無相庵カレンダーの発行に際しまして、私が解説する上で、まことに適切なご指導を頂きました事を、当時、私の力量では解説し難い『自然法爾(じねんほうに)』の解説をお願いした事と共に思い出しています。

井上先生のご講演は何回お聞きしましても飽きないものです。それは、お説教と言うよりも、自らがお話しになりながら、自らが私どもと一緒に自らの話をお聞きになっているような趣きがあるからかも知れません。教えてやると云う姿勢、目覚めよと言う高圧的な姿勢は微塵もない、しかし、私はこうお聞きしていると言う確固たる信念が伝わって来る格調高さが溢れ、比類の無いご講演でございました。

井上先生のお話しは、仏教を学ぼうとする方々、特に聖道門の禅宗では救われそうに無いと自覚された方々には、まさに、親鸞聖人が法然上人にお会いになった時と同じ位の感動を覚えられるに違い無いと思い、井上先生のご著書などから抜粋し、ご紹介させて頂くものであります。

写真の無相庵の額は、井上先生の直筆であります。また、先生のお写真は、多分未だ60位の時のものだと思います。

井上善右衛門(いのうえぜんえもん)経歴

明治41年神戸市に生まれる。
昭和7年神戸商大(現神戸大学)を卒業後、京大文学部大学院にて倫理学専攻。
法隆寺にて佐伯定胤について成唯識論を学ぶ。
昭和17年出征、昭和24年シベリヤ抑留より帰還復員。
昭和36年文学博士、
昭和46〜48年神戸商科大学学長。
昭和49年から55年まで、神戸女子大学文学部長(神戸商科大学名誉教授)。
平成10年5月3日ご逝去(90歳)。




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