◆ ◆ ◆ 唯識の世界 ◆ ◆ ◆
5.唯識と守・破・離
前項で、唯識の要(かなめ)とも言える『八つの識』を勉強いたしました。これから夫々の識について、学んでゆきたいと思いますが、その前に、唯識を勉強する上で、どうしても忘れてはいけない事、心得ておかねばならない事があると思います。唯識を学びながらも、ついつい唯識の真髄から離れてしまう可能性があると思うからです。
なかなか本題に入らないことに、いらいらされる方もおられるかも知れませんが、この唯識を確実に自分のものとし、私自身が勉強の為の勉強にならない様に、ゆっくりと進めて行きたく思いますので、ご容赦下さい(急がれる方、また、独自で勉強されたい方の為に、私が現時点で参考書としている本を末尾に紹介致しますので、自習して頂きたく存じます)。
表題に掲げた守・破・離(しゅ・は・り)と言いますのは、江戸時代の茶道の大家が言い始めたもののようですが、習い事をする上での心構えと言うもので、その後広く日本の武芸に使われるようになりました。この考え方は、既に武芸・スポーツに留まらず、ビジネスの仕事を習得する心構えにも応用されております。守・破・離とは、下記の3段階を申します。
私は、唯識を学ぶ上では、この守・破・離が特に且つ非常に大切な誡めだと思っています。守・破・離と言うのは、最終的には「捉われるな自分自身のものとせよ」と言う誡めでありますから、この守・破・離の考え方こそ唯識そのものだと申してもよいのではないかとすら思います。ただ、一言付け加えるならば、守・破・離の離というのは、師の教えとかけ離れねばならないと言うことではなく、師の教えるところと同じでもよいのである。しかし、師の教えを破る段階を経た上での結果としての『離』が求められていると思います。
捉われるなと言う事に付きまして、具体的な説明を5−1項で説明致します。そして、5−2項では、これから唯識を学ぶ筋道をお示し致しました。
5−1唯識を学ぶ上での心得たい事
5−2唯識を学ぶ道筋(予定)
5−3唯識の参考書(これから増えると思います)